2020年度宇宙探査オープンイノベーションフォーラム


本イベントは終了しました。ご参加頂きました方々へはお礼申し上げます。
動画とスライドを公開しました。下記プログラムに各リンクがございます。
当日の質問に対する回答を掲載しました。


  昨年の「月探査協力に関する共同宣言」の署名や日本人宇宙飛行士の月面着陸を目指すなど、将来的な宇宙探査の姿が具体化してきています。 今回は、これまでの研究成果が宇宙探査にどう寄与できるか、そして今後のイノベーションの形をどう作っていくかを語る場として、今後の研究提案募集(RFP) に求めるものや新しい取り組みについて2日間にわたりご紹介いたします。
  なお、今回はJAXAの他部門、国際宇宙探査センター主催の「国際宇宙シンポジウム2021」と 有人宇宙技術部門主催の「国際宇宙ステーション「きぼう」利用シンポジウム2021」内のプログラム内容と関係する部分がございます。
両シンポジウムも宇宙探査に関する情報をご紹介しておりますので、合わせてご参加ください。特に関係するイベントには矢印でしるしをつけています。

皆様のご参加をお待ちしております。

  宇宙探査イノベーションハブでは、宇宙探査イノベーションハブでの活動にフィードバックをかけることを目的として、企業(中小企業やベンチャー企業を含む)、大学、研究機関の関係者等の方々を対象に、 挑戦しようとしている課題と企業や大学の研究活動とのマッチングを探るための意見交換を「宇宙探査オープンイノベーションフォーラム」として定期的に開催しております。



プログラム

1日目 オープンイノベーションの成果~宇宙探査に向けて~

(プログラムは予告なく変更となる場合があります)
時間
2021年2月2日(火)14:00~16:00
14:00 開会挨拶
JAXA 理事補佐 五味 淳
14:05 「これまでの歩みと成果」
JAXA宇宙探査イノベーションハブハブ長 船木 一幸
14:20 「はやぶさ2と今後の宇宙探査について」(9.4MB)
宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系教授 久保田 孝
14:50~15:50

成果報告(各12分)+質疑応答3分


株式会社光電製作所 林大介

日立造船株式会社事業企画・技術開発本部機能性材料事業推進室企画・営業グループ 課長 岡本英丈

大阪大学 理学研究科宇宙地球科学専攻 助教授 山中千博

大阪大学 理学研究科宇宙地球科学専攻 助教授  佐伯和人

15:50 閉会

 

2日目 オープンイノベーションの将来~期待と仕組みの広がり~

(プログラムは予告なく変更となる場合があります)
時間
2021年2月3日(水)14:00~16:00
14:00 開会挨拶
14:02

講演

「宇宙探査イノベーションハブのこれから~Dual utilizationの将来への期待~」 (7.2MB)
NPO法人ミラツク 代表 西村 勇哉
14:32

ハブへのご案内

14:53

パネルディスカッション

「研究開発法人におけるオープンイノベーションへの期待とオープンイノベーションの将来」
  • モデレータ:坂下哲也(JAXA宇宙探査イノベーションハブ 副ハブ長)
  • パネリスト
    • 吉田 弘(海洋研究開発機構 研究プラットフォーム運用開発部門技術開発部 次長)
    • 脇本 秀一(日本原子力研究開発機構 事業計画統括部 事業計画統括部次長)
    • 沖田 耕一(JAXA 研究開発部門第四研究ユニット ユニット長)
15:51 閉会
JAXA 理事 佐々木 宏

 

1日目の質問に対する回答


はやぶさ2と宇宙探査について 月に住めるかどうかの計算は現在の時点でできているのでしょうか 月は真空で、温度差が激しく、放射線も影響します。いま無人探査が盛んに行われていますが、月に住めるかどうか放射線レベルも調査することも目的の1つになっています。月に長期住めるかどうかは今後の探査次第かと思います。
1回目のタッチの2月から2回目のタッチダウの7月までの約四ヶ月間ははやぶさは何をしていたのでしょうか 「はやぶさ2」チームは以下を行っていました。
・2月のタッチダウンのレビュー
・4月の人工クレータ運用
・2回目のタッチダウン場所を決めたり、確実に実行するシーケンスを考えていました。
・探査機自身は,小惑星と距離を保って、さまざまな観測を行い、4月に人工クレータを作りました。
タッチダウンにどのような人工知能がつかわれましたか? 地球から与えられたシーケンスを探査機は実行するわけですが、以下を自律的に行います。
・一定速度で降下する速度制御
・ターゲットマーカを探して追尾する(画像処理)
・予め教えられた場所に着地する
・着地したことを自分で判断する
・なにかおかしいなと思ったら、シーケンスをやめて浮上して安全な場所に行く
最後が判断を伴うので人工知能といえるかと思います。
GATEWAYに日本人宇宙飛行士は何名参画予定ですか? 日本は、まずはGATEWAYの構築に関わります。ISSで培った技術をもとに、居住機能や補給での貢献、国際居住棟の環境制御や生命維持装置の参画や物資補給などを検討しています。
宇宙開発をするご自身の個人的な意義をご教示いただきたいです。 宇宙開発の意義についてはいくつかのべましたが、私の個人的な意義の1つに、いままで見たことない光景を見たいということです。好奇心ですね。
はやぶさ2のどのような技術に探査ハブの技術が使われているのですか?また、はやぶさ2の技術でSLIMやLUPEX、MMXに継承されている技術はどんなものがありますか? はやぶさ2では、vSLAM技術とマリンレーダ技術を紹介しました。探査ハブでは、モータ技術、センサ技術、電源技術などの要素技術も研究開発しており、SLIMやLUPEX、MMXに使われる予定です。
「はやぶさ2」カプセル回収における固体化マリンレーダーの成果 共同研究の成果を今後地上・宇宙関わらずどう活用していくか計画・予定などありますでしょうか? 今回の実証で、宇宙分野において重要となる実績を上げ、実績を活用して衛星や探査機での採用を目指します。この他、地上でも高低温・真空等の特殊環境用途等へ展開できるよう成果を活用していく計画です。
全固体リチウムイオン二次電池(AS-LiB®)の宇宙での実用化に向けた開発状況 AS-LiBは容量が140mAhですが、高容量化は難しいのでしょうか。見込みはありますでしょうか? 今回の実証で、宇宙分野において重要となる実績を上げ、実績を活用して衛星や探査機での採用を目指します。この他、地上でも高低温・真空等の特殊環境用途等へ展開できるよう成果を活用していく計画です。
どれくらいの電流が引けますか 電流は140mAが最大電流となります。
月の砂漠に水をもとめて 開発を通じて知財に該当する新規技術が発明される場合もあるかと思いますが、その場合、権利はどこに帰属するのでしょうか。 本制度では提案者とJAXAが共同研究契約を締結し研究開発を行いますので、発明等が生じた場合は発明創出の寄与度に応じて権利の帰属を決定いたします。(この場合の寄与度には資金面の寄与は考慮せず、JAXAが研究費を支出していることを理由に権利を主張することはございません。)
月面の水が確認、採掘できたとして、人間の居住が可能になるまでにどのようなプロセスで開発が進むのでしょうか? 20年後までのプロセスをJAXAの探査シナリオにて、公開しております。
日本の国際宇宙探査シナリオ(案)2019 Executive Summary
海外に競合する観測機器はあるのでしょうか?日本や、米国のCLPSやVIPER も含めて月面の水資源探査のために機器を搭載するにはさらにどういったことが必要になりますか? NASAの火星探査機は、同じくレーザーを用いたTDLAS(波長可変半導体レーザー吸収分光法)という観測機器が搭載されております。月探査機に搭載するには、月面環境(放射線、温度、真空、ダスト)への対応など、宇宙用としての機能・性能の確認が必要となります。
月の極地の水ですが、三量体水素に、放射化している可能性はないのでしょうか? 太陽風には三重水素が含まれるため月の極地の水が放射能を持つ可能性があります。ただし、飲料でなく燃料としての使用を考えているため問題は少ないと考えております。
同位体について詳しくないのですが、どのくらいの範囲のレベルのものが人間は飲めるのでしょうか? 重水素は放射性ではありませんが、割合が多くなると健康に影響があるとという報告もあります。 3重水素(トリチウム)は放射能があります。トリチウムの出す放射線は、ベータ(β)線という放射線でありそのエネルギーは非常に弱く、紙一枚でさえぎることができますが、体内に取り込むと内部被曝が起こります。詳しい情報は「原子力資料情報室」等をご参照ください。
ロケット搭載で発射時移動時の振動衝撃に耐えられるロバスト性を持っていると考えてよろしいですか 宇宙探査イノベーションハブでの研究は、「ガス中微量水分計の小型・軽量・ロバスト化技術の研究」として小型化だけでなくロバスト性を目標として研究開発を実施致しました。本装置のロバスト性については、極めて優れていることが実証されています。

 

2日目の質問に対する回答


ハブへのご案内~RFP7について~ 研究成果が宇宙実証に進むかどうかはどのように決まっていくのですか? JAXAのミッションの計画、ニーズや事業者さんの事業化ニーズなど総合的にご相談させて頂きながら計画を立てていきます。
月ー地球をつなぐ通信インフラはどうなるのでしょうか? 通信インフラの構築は重要な課題の一つになりますが、現在は電波を使った通信が一般的です。光通信など新しい技術へのニーズもあります。
最大3億円/3年間というのは、RFP8課題型全体予算ではなく、1採択案件あたりでその額もありうるということでしょうか? 最大でその規模の可能性があります。実際はそこまでのものはあまりなく、共同研究の内容によって規模を設定します。
重ねてお伺いしたいのですが、これまでに、長距離光通信を研究開発テーマとする公募はありましたでしょうか? 第1回RFPでソニーさんと『長距離空間光通信を実現する光通信モジュールに関する研究』という研究を行いました。ただし、本研究は地球低軌道の小型衛星市場向けの技術開発でしたので、月ー地球間に向けた研究はまだ行っておりません。
パネルディスカッション 米国で宇宙での原子力電池使用を推進しようという動きがありますが、日本国もそのような動きというのはありそうでしょうか。 現在、JAXAとJAEAで放射性核種が出すアルファ線を熱源としたRI電池に関する意見交換を行っています。
我が国においては原子力災害の被害額に下限値が付いてしまったので、原子力に「新」と付けても採算を問われると厳しいのでは?大きな水源を必要としない原発が実現できれば内陸の外国に売り込めると思いますが… JAEAの「新原子力」の取組では、安全性、経済性、環境適合性、エネルギー保障の観点をより一層高めた原子力システムの開発を目指しています。経済性の観点でもそれを高める研究開発を進めて参ります。
宇宙での電力源として考えられる小型原子炉の開発はどれぐらい進んでいるものでしょうか?海外事例も含めて、最新の動向を教えてください。 米国では、近くNASAから月面での使用を目的とした小型炉に関するRFPが出される予定など、宇宙でのエネルギー源としての小型炉の研究開発が進められています。
オープンイノベーションによる協力の場合、その成果としての知財の取り扱いはどのようにすべきと考えておられますか。 革新宇宙輸送においては、RFIの段階で希望を伺う予定です。
どの産業分野でも人手不足や技術伝承の課題はあると考えますが、とりわけ原子力分野では、震災以降の環境変化から技術・人材の維持・発展というところは大きな課題になっていると思います。この課題に取り組むうえで、オープンイノベーションの枠組みで期待する部分があればお伺いしたいです。 技術と人材は不可分がところがあると考えており、オープンイノベーションの取組により、他分野の技術等を取り込むことで、おのずと人材交流が進み、自らの分野のみならず、他分野にも視野を広げた人材育成が進むものと期待しています。
新しい輸送手段の実現、非常に重要な課題だと思います。実現までには長い年月が必要だと思老いますが、このプロジェクトは何年間の活動を考えているのでしょうか? まずは5年後、10年後(部分再使用など)に実装していくことを検討中です。これについては、現在まさに文科省にてロードマップ検討委員会にて議論中です。
宇宙輸送技術と地上のデュアルユーティライゼーションというのが、イメージするのが難しいのですが、地上側にはどのような発展が望めるのでしょうか? 方向性として、低コストと信頼性は地上の市場でも共通課題と考えております。ロケットでは、既に車載部品を適用しております。これを材料、製造方法などの範囲を拡大していくことを考えてます。10年後の市場を想定しながら、実用化に向けた研究開発をオープンイノベーションの仕組みで加速させていきたいと考えております。
企業からの資金提供が増えると、近視眼的な研究の割合が増え、長期的な研究が成り立ちにくくなることはないのでしょうか 非常に重要なポイントと思います。直接企業のための研究にならないようなスキーム作りが重要です。
共同研究の中で発明された知財の帰属は、民間企業という認識でいいでしょうか? 特許等については,チェスブローにもあるように、非常に多くのスキームが考えられています。
海外に住んで業務経験のある宇宙ロケットエンジニアは日本で需要はあるのでしょうか。外国籍含めて教えてください。 ホワイト国であれば、需要はあると思いますが、分野によります。
放射線耐性は宇宙機に必須の技術ですが、高い宇宙用部品を使うのが従来のセオリーでした。長納期高価な部品リストから選んできたのですが、JAEAさんとJAXAさんが知見を持ち寄って(必要な検証も含む)低価格な登録部品を拡充したり、設計基準の緩和や設計事例集などをまとめて民間の参入障壁を下げることは出来ませんか? ご指摘の手法は有効だと思います。信頼性を担保すべき箇所、緩和できる箇所、その考え方など敷居を下げる活動は輸送系でも紹介のありました低コスト化に向けて今後も取り組むべき重要な課題だと思います。