ハブ長挨拶
日本はもちろん世界各国による月惑星探査が急速に広がりつつありますが、我々が目指す宇宙探査の究極の姿(ゴール)はどのようなものでしょうか?私は昨年度日本航空宇宙学会が発表した「宇宙ビジョン2050」の策定に参加しましたが、今から30年後の将来、地球近傍の宇宙は人類の活動の場としての地球社会の一部となっており、月や火星には人類が定常的に滞在し、人々が宇宙を観光旅行することが日常的となるなど、宇宙活動の発展により人類が様々な宇宙活動の恩恵を受けている未来を予想しました。こうした豊かな世界は突然現れるのではなく、様々な分野の段階的な発展に支えられることになります。
現在の宇宙探査は数多くの研究活動と国の支援に支えられていますが、今後は産業界の役割が非常に重要となります。企業が宇宙活動に参入し、新たなビジネスを立ち上げていくことができなければ、持続的な宇宙開発を望むことは出来ないでしょう。ただ、一般的な企業にとって、宇宙への参入の敷居が高いのも確かです。そこで探査ハブでは、 将来的な宇宙探査への応用を目的としつつ、地上での事業化/イノべーション創出の実現性に重点を置く「デュアルユーティライゼイション」を方針としており、こうした進め方は、産業界がその役割を順次拡張しながら持続的な成長を宇宙開発にもたらす上で極めて有効であると考えています。
こうした優れたアプローチにより、これまでの5年間の活動にて、広域未踏峰探査技術、自動・自律型探査技術、地産地消型探査技術、共通技術の各領域にて、萌芽的な新規技術への挑戦から宇宙における技術実証の実現までの幅広い研究開発成果が得られており、目標としてきたオープンイノベーションが徐々に実現しつつつあります。その一方、これまで試みはまだ充分な規模とは言えず、イノベーションを追求する活動を定常化し、企業による事業の拡張と探査への適用を確実にしていく必要があるでしょう。多様な人材と研究開発テーマをハブに集約して実施する活動を、宇宙探査オープンイノベーションハブのフェーズ2活動と称して推進していただきたいと考えています。産官学の幅広い分野の皆様のご参加とご協力を、どうぞよろしくお願いいたします。
宇宙探査イノベーションハブ ハブ長
船木 一幸(ふなき いっこう)