クロスアポイントメント インタビュー②

企業等とパートナーシップをむすび、宇宙探査にまつわる多彩な研究に取り組む「宇宙探査イノベーションハブ」。 ※クロスアポイントメント制度を用い、2016年からJAXA宇宙探査イノベーションハブで共同研究を行ったタグチ工業(株) 岡田康弘さんにインタビューをおこないました。


※クロスアポイントメント制度:国内外の研究者等の受入れを促進するため、所属機関に縛られることなく研究者等が活躍できることを目指した制度です。研究者が企業・大学・研究機関等(出向元)とJAXA(出向先)の双方で雇用されつつ、それぞれの機関の役割に応じて研究開発業務に従事することができます。JAXAでは、2015年3月にクロスアポイントメント制度による職員受入制度が整備され、宇宙探査イノベーションハブでも制度を利用した職員を受け入れています。

タグチ工業株式会社 技術本部 岡田康弘さん


宇宙用建設機械イメージ
宇宙展開宇宙用建設機械イメージ ©タグチ工業株式会社

Q1.クロスアポイントメントとしてJAXAに入っての感想を教えてください。

A:最初は会社の代表としてJAXAに入り研究するというプレッシャーが大きすぎて苦しい思いをする事もございましたが、他のJAXA職員の方々の温かい多くのサポートを頂き続ける事が出来ました。今までに無い新しい経験もさせて頂きましたのでただただ感謝しかございません。出向とは異なり自社とJAXAを行ったり来たりと日によって行う業務内容が変わりましたので大変な事もありましたが、業務内容が180度全く異なるという訳では無くどちらも建機に関する内容でしたので今まで自社で開発してきた事をJAXAで生かせる事も出来ました。 私の場合岡山と東京・神奈川の往復といった長時間の移動や勤務場所の雰囲気、街自体も大きく変わる為か「あ、次戻った時にあの部分をこうしよう」といった閃きや刺激もあってモチベーションがあがり大変良かったです。

Q2.共同研究するにあたり、クロスアポイントメントとして参加したメリットはありましたか?

A:今まで地上での使用を前提とした製品を開発していましたが、クロスアポイントメントにより JAXA職員として業務にあたる事で宇宙用の研究にも携わる事が出来そこから新しい知識、知見を得ることが出来ました。また、こういった物が宇宙側では求められているんだという事も分かり、今までの自分には無かった多くの経験をさせて頂きとても勉強になり色々な活動の幅も広がった感じが致します。 また、自社とJAXAを行ったり来たりしていましたのでRFPの研究について何か打合せをしたい場合でもJAXA研究担当者、共同研究機関担当者との打ち合わせスケジューリングに時間がかかるとか、質問に対する回答がなかなか得られない、研究の進捗状況をリアルタイムで把握出来ないという事が無く、自社へ戻った際にすぐ打合せや研究状況が把握出来ましたので 「次に何をどうするか」の調整もしやすく、その分研究スピードが速くなり良かったのではないかと思います。

宇宙用建設機械イメージ
複合材製軽量油圧ショベル ©タグチ工業株式会社

Q3.ハブでの共同研究が事業化および特許取得をしたが、当初からそれを目的にしてこられたのでしょうか

A:事業化は採択条件でしたのでこちらは当初から目的としていましたが、研究期間中に事業化しようという目標まではございませんでした。事業化致しましたアタッチメント着脱装置ですがこちらの研究を進めて行く中で市場から製品化の強い要望があり「一刻も早く市場へ投入しなければ」という事でこちらの研究に注力した結果、研究期間中に事業化達成をする事が出来ました。 特許も研究成果の一つとして出願したいという思いはございましたが、まずはこういった物を作りたい、こういった研究をしたい、を重視しておりましたので特許出願目標はあまり重要視していませんでした。

ダミーです
追加機能版アタッチメント着脱装置 ©タグチ工業株式会社
ダミーです
追加機能版アタッチメント着脱装置へアタッチメント取付例
©タグチ工業株式会社

Q4.JAXAに入って意外だったことはなんですか?

A:ロケットはJAXA構内で製造・組み立てし、種子島宇宙センターまで輸送していると思っていました ので製造工場や加工機械、組立途中のロケットが構内のアチコチで見られると思っていました。 事業所が調布や相模原等各所にあるとは知らず筑波と種子島にしか無いと思っており各所にあると知った後でも本社が御茶ノ水では無く調布という事で更に驚きました。

Q5.JAXAで印象深かった経験は何ですか?

A:普段の業務では分業により設計から製造、製品完成まで自分で全てを行う事はございませんが、 JAXA職員としてRFPの研究課題とは別にJAXA内部での研究をさせて頂きそこで研究立案から研究終了まで全てを自分で決定、実施する場合もあり、今までにその様な経験がございましたので印象深かったです。

Q6.クロスアポイントメント終了後、JAXAでの経験をどう生かしますか?

A:RFPでの研究成果発表以外にも自社製品について紙面での発表・掲載や取材対応等広報的な活動をする機会が増え、クロスアポイントメント中の講演会への参加等の経験が既に生かされ ています。

岡田康弘さん
タグチ工業株式会社
技術本部
岡田康弘

Profile

2016年7月からクロスアポイントメント制度を用い、JAXA宇宙探査イノベーションハブに出向。CFRP製のアームとブームによる建機の軽量化を実現させた。
趣味は模型製作。 工学部機械工学科修了。

これまで携わった宇宙探査イノベーションハブとの共同研究

超軽量建機アタッチメントおよびブームの開発および実地検証
遠隔操作およびアタッチメントの自動脱着可能な軽量建機システム等の開発と実地検証