ハブ長挨拶

昨年2023年は、世界的な月探査活動が活発化した年でした。官民の数多くの探査機が月に挑戦して降り立ち、およそ50年ぶりの有人月探査となるアルテミス計画が進展する中、早くも「月の経済圏」が語られるようになりました。その一方で、月で持続的な活動が実現するまでには、乗り越えなければならない壁、技術的な課題が数多く残っています。宇宙探査イノベーションハブ(探査ハブ)は、将来月探査を指向した研究開発を2015年からスタートし、産官学が集うオープンイノベーション方式にて、地上の優れた技術を宇宙へ導入してまいりました。探査ハブのオープンイノベーション成果が月探査へ適用されたのは2024年1月に我が国初の月着陸機となったSLIMの撮影に成功した超小型変形型ロボット(LEV-2, 通称SORA-Q)が初めてということになります。

JAXAの月探査は、今後、月南極域探査、SLIM後継探査、そして月面与圧ローバーへと進展していきますが、SORA-Qに続き、数多くの新基軸を月へ、そして火星へと送り出したい、というのが、我々の願いです。国際的に広がる月探査、そして持続的な月活動を支えるための新しい研究制度として2024年度からスタートするのが「Moon to Mars Innovation(月から火星へのイノベーション)研究制度、MMI」です。MMIでは、探査ハブのオープンイノベーション研究制度を全面的にリニューアルし、産官学がパートナーと共に次世代の探査コンセプトを共創し、月探査の新基軸をスピード感を持って月に送り出すことを目指しています。国際的な探査力の向上を、民間の皆様が無理なく、そして強い興味を抱いて参加できる研究環境を用意してお待ちしていますので、皆様の積極的な参加をよろしくお願いいたします。

2024年4月
宇宙探査イノベーションハブ ハブ長
船木 一幸(ふなき いっこう)